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大阪府 大阪市 8/31  


大津あたりから途切れることなく、街が続きます。

大阪市に入り、少し滞在をします。
行く予定だったところ、会う予定だった人のところ。

迷いながらみる景色は、呆れるほど立体的に何重にも折り重なる道路を避けて、電車が走っています。
そしてその地下にもひっきりなしに行き交う地下鉄が走ります。
駅の出口を間違えてしまうと、外国に来たかのような景色と満員電車の人のジャングルに、ふと田んぼの景色を懐かしく思います。

まだ福井にいた頃に出会った、農家のおばぁちゃんは、前歯に青のりをつけながら、毎日の稲の仕事を教えてくれました。

季節にあわせた毎日の仕事。
天気にあわせた毎日の仕事。
鳥にあわせた毎日の仕事。
流行り虫や病気にあわせた毎日の仕事。

一つ一つが気の遠くなるものばかりです。
一呼吸のときに、曲がったなりに腰を伸ばすしぐさや、会話のなかの言葉の丸さから感じるものがあります。

植物や作物という言葉より、生き物と対峙している。
あたり前で同じことなのかも知れませんが、その青のりのおばぁちゃんが、稲は子供と同じと言っていたことで、稲との向き合いの日々を暮らしているのだと思います。

琵琶湖に出る前にみた田んぼでのことです。
少し赤くなりはじめた空のなか、田んぼと田んぼの間の細い道を歩いているおばぁちゃんを見つけます。

しっかり伸びている稲で、肩から上しか見えませんが、ゆっくりと道路に向かって細い道を歩いています。
目の前のおばぁちゃんと、青のりのおばぁちゃんを重ねて思います。

今日も強かった日差しのなか、1日の仕事を終えたのだろうと思います。

田植えから今日まで毎日毎日、汗を流しながら一つ一つの稲を、気の遠くなる田んぼの広さを仕事して歩いているだろうと思います。
通り過ぎた台風や、ひどく降った梅雨のことを思いかえし、変わらず稲を育てたんだろうと思います。

その大変さを、思い浮かべながら、
「今日も1日お疲れさまでした」
と心のなかでつぶやきました。

やわらかい風が吹くなか、おばぁちゃんはやがて道路まで歩いてきました。
道路まで出たところで、曲がったなりに腰を伸ばし、一呼吸をしています。
「ご苦労様でした」
と、もう一度心のなかでつぶやくと、なにか暖かい気持ちと、勝手に親近感を持ちます。
またゆっくりと歩きはじめます。

曲がった腰とゆっくりとした動きで少しずつ進みます。
そして同じく少しずつの早さで田んぼの中からひょっこりと犬が出てきます。

「? 散歩かー!?」

うっすらと見えるおばぁちゃんの右手にヒモを持って、首輪までついていました。
読みがはずれ呆然としますが、もしかしたら犬を連れての仕事帰りかもしれないと思い、少し早めに歩いて話しかけます。
近所に住んでいて、農業とは無縁、毎日の犬の散歩コースとあっさりと念を押されます。

田んぼを歩く人にも、いろんな方がいます。
電車に乗る人もいろんな方がいるのと同じように。

人込みもまた、面白い。
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