人気ブログランキング | 話題のタグを見る

<a href=hitoshi ameya " border="0">

沖縄県 喜屋武岬 11/10  

予定通りゴールをし、一息つく間もなく沖縄の史跡を巡ります。

ただ、事実としてゴールしたこと、もう歩かなくてもいいことが、まだ実感ができない自分がいます。

なにか、ピンポン玉のような小さな物語を、サンタクロースが持つような大きな白い袋のなかに、1日一つ、明日も一つと入れていたような感覚があります。

いくつ入れても重たさを感じない袋は、パンパンになるまでたくさんのモノコトを教えてくれます。

腕を入れるとどこまでもピンポン玉の感触が柔らかく、たまたま指に引っ掛かるものを取り出すと、思い出す景色や匂いが出逢った人達の顔や動きを短編映画のように見せて、大事にもって袋にまたしまう、そんなことを繰り返しては過ぎていきます。

残り13キロ。

携帯電話から直接「 イマジン 」をかけます。
AMラジオから流れるように聞こえてきます。
サトウキビ畑で、疲れていないのにわざと腰をおろして、少しだけ本を読みます。

13キロ。

初めてサギのひなを見ました。
まだ首は短く、両手で持って少し余るくらいに、しかしながら膝を高々とあげて歩く姿は大人と変わらず、父なのか母なのか、同じ動きで、同じ羽の色でいます。

13キロ。

今日見たサギのひなのようにいた自分を思いだします。
北海道の実家から、隣町にある祖父母のお墓とその少し向こうまでの距離です。

13キロ。

実家から3人で歩いています。
去年の今頃、長年の血の塊が右足の血管をつまらせ、200メートルもそこそこに、痛みと強張りで歩けなくなり、2度の手術で見違えるように歩く父親と、兄と3人で歩いています。

途中、母が先回りでお墓の掃除をすませて3人を待っています。
おにぎりと簡単なおかずを持っています。
季節少しはずれの、一家の墓参りをしたあとのピクニックのように外でおにぎりをくわえます。

その後、疲れたと兄はリタイア、父と二人で歩きます。
父の地元でもある隣町には、いままで知らなかった幼少期の話や、顔馴染みだった近所の話を、少し息があがりながら話してくれます。

13キロまで来たところで、

「これくらいで今日は止めようか?」


気が付くと5時間かかっていました。


ゴールまで、あと13キロ。

缶コーヒーを飲みほして、歩き初めます。

あの日、同じ毛並みのサギのひなのように歩いた距離の先には、隣町ではなく喜屋武岬があります。

あのとき5時間かかって歩いた距離は、今では2時間半でした。





旅は終わりました。
「 イマジン 」を静かに止めて、大きく息を吐きます。

「ご苦労さん」

風邪一つひくことなく最後の最後まで素晴らしい毎日に付き合ってくれた身体に一言、吐く息に混ぜるように言いました。
感謝が込み上げるまでもなく、朝からずっと鳴り止まない携帯が、一人ではないのだと、証明するかのようにいます。

それなのに、まだ、

こんなにも、おめでとうと言われてもなお、

全身でありがとうと繰り返しても、
実感がありません。

「明日も間違って歩くんじゃない?」

出逢った方からの冗談に、苦笑いで答えます。

ただはっきりしているのは、本当に素晴らしい旅であったと、雲一つない空のように、胸をはって言えることが幸せ者だと、スッキリとしていて笑っています。

大袈裟でもなく、事実として1日も漏れることなく、素晴らしい日々だったと、一人一人や一つ一つが自分の歩く少し前を繋いで続けてくれました。
ただ自分はその道を歩いただけでした。

こんなにも晴れ晴れとしているのに、不思議と実感はありません。

やはり、長い旅の途上なのかもしれません。

次の旅は…、
その旅もまた、日本を歩ききっても、結局ひなのように半人前でいて歩いていくのかもしれません。

自分はそれでもよいと思っています。

もう少しの間、少しゆっくりと、パンパンの袋からいくつかのピンポン玉を出しては、短編映画を綴ろうと思います。
あわただしく冬仕度を始めた北海道から、少しゆっくりと綴ろうと思います。

「有り難い」

また少し、意味を知りました。
本当にありがとうございます。
<< はじめの3日間 11/8 関西国際空港 >>