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兵庫県 淡路島 9/13  


一歩この島に降りたとたんに、不思議と故郷に帰ったような気持ちになりました。
それは、日増しに強くなり、その分だけ別れの名残惜しさも強くします。

東京大学の教授の方は、
島国のなかの島国
と言ったことがあるようです。

自他共に、人ののんびりさ、緩やかさは、出逢いの数だけ納得します。

歩いて通った土地は、必ず好きになってしまう得な性格ですが、この島には執着してしまいそうな自分に少し驚きます。
別れの挨拶に、87歳のおばぁちゃんが、
「いいねぇ、わたしも旅したい」
隣にいた少しだけ若いおばぁちゃんがすぐに、
「あんた旅したら別の旅になってしまう」

「ノー リターンの旅や」

そこにいた10人ほどが大笑いで、別れのあとの再出発となりました。
道中に思い出すのは、いくつも訪ねた神社やお寺や遺跡。
そして山にもいくつか登り、海だけではなく植物とも触れることができました。
世界で二番目に自生植物の種類が多い地域のようで、山を登る脚どりもいつもより力強さを感じます。

日中のある日は、生き字引と言われる方を訪ね、国生みから北海道との関わりを2700年の時を超え教えてもらいます。

ある日は無農薬や減濃にとりくむ方々を訪ね島国といえど、同じように今日の環境と向き合い、二毛作、三毛作へととりくむ方々と触れあいます。
ある日は歴史を紐とく遺跡や傷跡を訪ねたり、一億年の歴史を見つめる島を山に登り眺めます。

ある日はくだものや野菜を売りに神戸でのイベントに参加させてもらったときは、すっかり島民気分でいる自分に少し可笑しく思います。

夕方になると、毎日小学校六年生の少年が訪ねてきます。

故郷を思う心に打たれながらも、お腹がすくのと眠気がくると、すぐにぐずる姿が毎日可笑しくて、笑ってしまうと笑い返してきます。
その少年と、気持ちだけは少年少女のような中年大人4人が軽のボックス車に、小さなカニが横切る駐車場で乗り込みます。
全員で5人の少年少女隊は無理矢理車に乗ると山に向かっていかにも重たそうに動きます。

運転をしている、気持ちは少女が突然言います、
「うちの車はクーラーがフレックスタイム制や」
お世辞にも新しいとは言えない、ベテランの車は、暑さのきつい時はクーラーがつかずに、涼しい時に限ってエアコンがききます。

それでも、エアコンがついたとたんに歓声がわきます。

山のふもとに付き、車を降りて皆で山に感謝をしたあと、山道を歩いて行きます。

やがて山道もなくなり、掴まるものは木の枝やたくましい雑草、崖をよじ登り、道なき道をひたすらあがります。

目印をつけながら、たまに来たルートを記憶しながら上がった先には、何もかも忘れてしまうような、自分がどこから来たのかさえわからなくなるような景色が当たり一面に拡がります。

空はどこまでも、その脇役で山がいくつか横になり、港を落とし物のように小さく小さくチョンと乗せている海が山と山の隙間を埋めます。

トンビは近くの起伏に群れをなして、振り返って背中を向けると、後ろには山々が水墨画のようにいて、時が止まって静かにいるように感じます。

由良という地域に入ってから、トンビの数の多さが気になっていて、ちょうど目の前がたまり場になっていました。
気になってうっそうと茂る広葉樹の森を一人で入っていくと、少年もついて来ました。

ふと足元にある白い細長いモノを見つけると、

「骨?」

少年はすぐに手に取り、
「違う、鹿の角だ。かなり若い鹿だ。
オス同士のケンカのあと」
角を片手にブンブン振り回しながら歩くその姿は、毎日ぐずる子供の面影はなく、一人前の男の姿でした。

しばらくして、今いるところの不自然さに気付きます。
みんなも呼び、揃うと、そこにはない種類の岩で作られた道があり、もしかしたら発見されていない遺跡かもしれないと、一同小さく興奮します。

しかし、森の山道はただでさえ暗く、日も傾き始めていたため、帰り道がわからなくなります。
急いで下山をし、もう一つ鹿の角を拾うと無事にフレックスエアコンの車に乗り込みます。

そんな山登りは毎日のように、そして晴れた夜になれば、少年と二人で防波堤のコンクリートに横になり、星空を眺めます。

星空の合間に、少年はクイズ形式で、どの船がどんな魚を水揚げするかを教えてくれます。
次のクイズは、どの船が何時に出航するかを教えてくれます。
そんな時も、小さな男の顔をして、少し遠くを見つめます。

いつの日か、あまりに島を好きになっている自分に、どこがそんなにいいのか聞かれました。

なぜか答えを用意していたように
「人も自然も街も矛盾がないところ」
と言っていました。

聞いていた10人近くの人達は、皆声は出さずに小さく笑ってくれました。

自分を呼ぶ声が「さん」から「君」へと変わり、何人かのお世話になった方は、苗字ではなく下の名前で呼んでいたのに気付きました。

旅立ちに、皆それぞれ重たいだろうと遠慮して持たせてくれたはずのモノは、はち切れそうなくらいにバックパックを膨らませます。

しかし、実際にもらったモノは、この島を埋め尽くすほど大きなもので、それでいて、足取りを軽くしてくれるモノでした。
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